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1.目的
プリント配線板上に電子部品を実装する際の組立費を算出するための基準を設ける。

2.概要
実装基板コストを考える上では、下記の一連の流れを考慮に入れて、試算する必要がある。
回路設計→基板設計→製造治具設計→電子部品実装→検査→半田付け→検査→ケース組立
→検査→梱包→出荷

回路設計は、製品の仕様を満足させるための制御回路設計であり、その要求仕様が同一で
あっても、回路を設計する設計者によって、使用電子部品数に差が発生する。

その差が、部品コスト差になって現れると同時に、組立工数にも差が生じる。
その結果製品コストに影響する。

従って、最大のコストダウンは、回路設計が原点といえる。回路設計者は、電子部品の選択
に始まって、回路構成のシンプル化等、に努めると同時に生産工程のロスをも最小限に抑え
る回路に仕上げる必要がある。その上で、要求機能を最大限発揮する回路に仕上げなければ
ならない。

ノイズが心配だからと、無闇にパスコンを入れるとか、今まで使用してきた回路構成を吟味
することなく、そのまま採用するといった深い検討無く進めるのは、結果的に高価な製品を
造ることになり、競合他社に遅れをとることになる。

しかし、そういった回路設計の段階での問題点は別として、回路構成が一旦決まれば、次工
程以降において、組立コストを最小限に抑える知恵が求められることになる。

基板設計は、仕上がった回路に基づいて、如何にして基板を小さく、組立易く間違いが出難
い部品配列、不良の出難いパターン設計、そして製造へのスムーズなCADデータの引き渡し、
等を求められることになる。

製造治具設計は、CADデータに基づいて、検査から組立の作業性をアップさせるために至
る一連の治具を設計しなければならない。これは、生産性の良否を決める大きな要因になる。
しかし、生産性を上げるためとはいっても、設備投資と効果のバランスをよく考える必要が
ある。

電子部品実装は、自動機を用いての組立と手による組立で成り立つ。最近は、自動機による
組立が大きな比率を占め、この部分を如何に効率よく行うかが製造コストの良否を決定づけ
る。マシンの能力、メンテ、コストをうまくコントロ―ルして、設計と常時マッチィングさ
せながら進めることが組立コストを下げるコツである。手で組み立てる部分は機械のように
安定せず、不良率も高くなり、能力差による安定度に欠ける。従って、ワークファクターと
評価をバランスよく取り、基板設計とうまく融合させながら工程管理する必要がある。

検査は、各工程に必要なものであるが、必ずしも固定した概念で一律に設定することには問
題がある。それは、どの製品に対しても同じ検査工程を取る必要はなく、製品の仕様や、工
程不良の推移と絡めてフレキシブルに対応することに他ならない。

そのためには常時工程不良チェック、改善に努め、そしてその結果を反映しながら検査工程
を流動的に設定する。

半田付けは、一番安定度に問題があり、日常管理が非常に重要な工程である。これも基板設
計との融合が大切。

ケース組立は、主に実装基板を保護するためにケースを組み立てるが、基本的には基板組立
と大きくは変わらず、自動化もかなり進んできている。

全体を通じて、生産方式のロット生産の大小で大きく組立コストに差が発生する。従って、
生産工程管理も重要なコスト要因となり得る。


3.算出構成要素
次の四要素で試算する。
組立費=(部品費×数)+(工程別組立工数×工程費)+利益
ここで一番大きなポイントは工程費である。

(1)部品費+数
基板上の部品リスト、及びケース組立の構成部品リストを作成する。
基板上の部品リストは通常CADの回路図から出力される。
<例>

部品名称

単価

実装形態

代替品

 

 

 

手挿入

 

 

 

 

自動挿入(アキシャル)

 

 

 

 

自動挿入(ラジアル)

 

 

 

 

面実装(部品面)

 

 

 

 

面実装(半田面)

 

この時、各部品の実装形態を明らかにしておく必要がある。
代替品は、時として現採用品が入手困難になったり、品質トラブルに見回れた際に代用できるか確認要。
(場合によって、製品の存続、信用に関わる問題が発生)
事前に代替品の組立コスト、実装上の問題有無確認必要。

(2)工程費
5.1.実装工程
組立コストは基本的に実装する形態に応じて経費は異なる。
従って、各実装形態単位で組立工数を確認し、試算する必要がある。
例えば「自動挿入(アキシャル)」の場合、<例>アキシャル:挿入時間0.25〜0.6sec/点
アキシャル挿入機一つにしても製造ラインには何種類か存在する。各組立工数も異なる。
また、マシンの導入時期によって償却費用も異なる。
従って、各年度単位におけるマシン総トータルの設備償却費用、及び運転経費を計算しておき、
単位組立工数費用(製造レート)を計算しておく必要がある。

その単位費用を実装形態に応じて工数乗算すればよいことになる。
単純に、ある製品は実装スピードの早い、安価なマシンで生産したからといって、組立コストが下げられる
というものではない。

<例>

実装形態

総部品費

組立工数

工程レート

総費用

面実装(部品面)

 

 

 

 

面実装の場合は、半田面と部品面の実装で多少組立状態が異なるため、分けておくのが賢明。
また、手挿入の場合は、部品単位で標準組立工数(WF)を決めておき、それに合った人件レートを組入れる。
手挿入は人によって工数にバラツキが出るため、能力に応じた評価とマッチィングした工程管理を行う必要がある。

<例>
総アキシャル自動挿入機の設備償却費=A、左記マシン関連人件費=B、総間接経費の左記マシン割当費=C
上記(A+B+C)からレート(例えば分レート)を年度単位で試算しておく。
各実装単位でレートを分ける理由:各マシンで投資額も異なり、係る人員も異なるため、そのレートに応じて、
実装基板設計のやり方も変えることができる。常日頃、生産と設計は例えば5ヶ年生産計画と合間って進められる
べきものである。

5.2.半田付け工程
上記までは正味の部品組立工数であり、この後、半田付け工程が必要となる。
これは、工数短縮しようと思えばラインスピードを上げればよいようであるが、半田付け性との関連でその会社
特有の標準工数となる。

従って、品質良く、工数短縮の計れるラインが優れた製造工程ということになる。
実装マシンの場合と同様に組立コストを算出する。
5.3.検査工程
製造工程は実質「物造り」のみで構成されるものでなく、品質保証し、結果的に生産工程費用を最小限に抑える
ための働きとして、検査工程が必要となる。

これについても同様、検査工数と、治具製作償却費、経費の関連で試算する。
5.4.総組立コスト計算
以上の事を前提に、組立工数により計算した費用に人件費、建物等の間接費用を乗算する。それにより、
実装基板の組立原価とする。

<例>

工程

部品費

組立工数

工程レート

組立費

利益

コスト

自動機工程

 

 

 

 

 

 

手挿入工程

 

 

 

 

 

 

半田付工程

 ―――

 

 

 

 

 

修正工程

 ―――

 

 

 

 

 

検査工程

 ―――

 

 

 

 

 

ケース組立工程

 

 

 

 

 

 

ライン搬送工程

 ―――

 

 

 

 

 

出荷工程

 ―――

 

 

 

 

 

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